2話・同情するなら安定をくれ

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「どうかしましたか。江本……もとい、営業の田中さん」 終わった……社員の夢、ここに破れたり。 ガックリと肩を落とした私に、桜田課長は予想外の言葉をかけてくる。 「その作者、お好きなんですか」 差し出された指にドキリとした。 どうして今まで気がつかなかったのだろう。 冴えない容貌に似合わず、節の目立つ長くて男らしい指。 〝手フェチ〟の私としたことが、うっかり見落としていたようだ。 それをおかずに、白飯をかきこみたい欲求を抑えながら、彼の指す本に目を落とす。 「佐田倉(さたくら) 風助(ふうすけ)ですか?……ええ、まあ」 「前にも同じ作者の本を読んでいるのを見ました」 流石はリストラの鬼。よく見ていらっしゃることで…… 「ええ、桜田課長もお好きなんでしょうか」 「どういうところが?」 私の質問には答えないんですね――というツッコミはのみこんで、ページをめくりながら答える。
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