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* * *
「うっ、てて……」
「江本さん、どうしたの?」
腰の痛みに悶える私に、庶務課の主任が声をかけてくる。
「ちょっと、腰が……」
「昨夜は彼氏と激しかったのかな」
「やだ、変な想像やめてくださいよ」
こういう時は『セクハラです』なんていきり立つよりも、聞き流すほうが楽だ。
「もしかして、お相手は相田だったりして」
主任の軽口に、ハイエナ軍団が殺気立つ。
「まさか、違いますよ」
しっかりと否定してから、これ見よがしに伝票のファイルを開いた。
それでも続けようとする空気の読めなさが、勤続30年。万年主任たる所以だろう。
いっそ『相手は桜田課長です』と言って、課内を凍りつかせてみようか。
良からぬ想像に思いを馳せていると、『おはようございます』と、入り口で爽やかな声が響いた。
「相田さんっ。今日のネクタイ、すっごく可愛いですねっ」
ハイエナのリーダ、原口静香が鼻にかかった声で立ち上がった。
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