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「ありがとう、原口さんのネイルも夏らしくていいね」
相田さんは得意のリップサービスで、彼女をすっかり骨抜きにしている。
そのまま、よろしくやっていて欲しい。
そんな願いは叶えられることなく、彼女との会話を早々に切り上げた相田さんが、満面の笑みで駆け寄ってきた。
「おはよう、巴ちゃん!」
「おはようございます」
「昨日はありがとう、凄く楽しかったよ」
このタイミングで、なんて余計なことを……
「なんだ、やっぱり相手は相田だったのか」
ほら、主任が食いついた。
原口さんからも、殺気が立ち昇っている。
「違いますっ、相田さんとはランチに行っただけです」
「巴ちゃん、呼び方」
「え?」
「ほら、これからは涼平さんって呼んでくれるって――」
「相田さん、ちょっと来てください!」
彼の腕を掴んで、庶務課から引きずり出した。
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