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「困ります、誤解を招くようなこと」
「誤解って?」
「だから、その……私たちが特別な関係みたいな……」
真っ直ぐな目で見つめられると、言葉に詰まってしまう。
「来て。コーヒーでも飲もう」
「へっ?」
脈絡もなくそう言った彼は、先に立って歩き出すと、フロアの奥にある簡易休憩所で足を止める。
「座って。なに飲む?」
「えっと、じゃあ……ミルクティーで」
有無を言わさぬ口調に気圧されて答えると、自販機で買ったミルクティーを手渡される。
相田さんは自分用に買った缶コーヒーのプルタブを引きながら、私の隣に腰を下ろして、一気に中身を飲み干した。
仕事終わりの生ビールを飲んだみたいに、大袈裟に『ぷはあ、美味い!』なんて言うから、少し笑ってしまう。
「良かった、やっと笑った」
包み込むように見つめられて、今日は一度も笑っていなかったことに気がついた。
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