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涼平さんはふいと視線を落とし、口元を手で覆いながら言う。
「その……こういう言い方は恥ずかしいんだけど、なんていうか……巴ちゃんの盾になれないかなって」
「盾、ですか?」
「うん、俺の恋人だって思わせておけば、セクハラや嫌がらせも減るだろうし、仮に何かあっても堂々と守れるだろ?」
思ってもみない言葉だった。
誰かに守られるなんて考えたこともなかったし、強い人間であろうとしてきた。
「だけど……涼平さんに迷惑がかかります」
「なにも出来ずに、指を咥えて見てる方がずっとキツイ。だからさ……ね、そうしよう」
強引なほど強い眼差しが、心地よかった。
自分は守られるべき存在なのだと……
甘えていいんだと……
そう言われているようで。
彼の言葉がしなやかに私の鎧を払い去り、むき出しの心をすくい取ろうとする。
この手を掴んだら……私は……
そのときだった。
「お取込み中、失礼します」
背後からの呼びかけに、我に返る。
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