6話・狼がシジミにかわる朝

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涼平さんはふいと視線を落とし、口元を手で覆いながら言う。 「その……こういう言い方は恥ずかしいんだけど、なんていうか……巴ちゃんの盾になれないかなって」 「盾、ですか?」 「うん、俺の恋人だって思わせておけば、セクハラや嫌がらせも減るだろうし、仮に何かあっても堂々と守れるだろ?」 思ってもみない言葉だった。 誰かに守られるなんて考えたこともなかったし、強い人間であろうとしてきた。 「だけど……涼平さんに迷惑がかかります」 「なにも出来ずに、指を咥えて見てる方がずっとキツイ。だからさ……ね、そうしよう」 強引なほど強い眼差しが、心地よかった。 自分は守られるべき存在なのだと…… 甘えていいんだと…… そう言われているようで。 彼の言葉がしなやかに私の鎧を払い去り、むき出しの心をすくい取ろうとする。 この手を掴んだら……私は…… そのときだった。 「お取込み中、失礼します」 背後からの呼びかけに、我に返る。
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