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この硬質な声は――
「桜田課長。おはようございます」
涼平さんが、立ち上がって頭を下げる。
「おはようございます。自販機をお借りしていいですか?」
「もちろんです。巴ちゃん、行こうか」
「ああ、その必要はありません。僕はすぐに退散しますから」
課長は、自販機にコインを入れて『今日も暑いですね』と、シャツの袖を捲りあげた。
その腕に露出した包帯。
「どうしたんですか!?」
驚きの声をあげた涼平さんに『ああ、これ』と、ため息で返した課長が、チラリと私を見る。
「助けた野良猫に噛みつかれましてね」
昨夜の悪夢が、脳裏によみがえった。
そうだ。
おでこにキスをされたあと、組み敷かれそうになって……逃げないからと油断させて、噛みついたのがあの場所だった。
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