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けど……仰々し過ぎやしないだろうか。
「そんなに強く噛まれたんですか?」
疑いの眼差しを向けた私に、課長は大袈裟に眉をひそめ、
「ええ。嘘つきで、うるさくて、とても狂暴な猫でした」
言いながら、包帯の上を撫でて見せる。
「涼平さん、行きましょう」
「え……ああ、うん。桜田課長、お大事に」
これ以上ここにいたら、なにを言われるか分かったものじゃない。
どう考えたって、この包帯は私への当てつけだ。
すれ違いざまに、一瞬だけ目があった。
その目が私を絡め取るように強い輝きを放ったのは……
たぶん、気のせいだと思う。
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