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「ところで江本さん。来月の面談よりも少し早いのですが……」
冷たい目にギロリと差しぬかれる。
「契約違反により、数日のうちに解雇を予定しています」
「えっ、名前を偽っただけでそんな――」
「だけ――ですか。浅はかですね。考えてもみてください。仮に僕が君のウソを信じて、営業の田中さんの評価を落としたら?」
「……あ」
営業部の社員は、本社だけで100人を超える。
それだけいれば、ありきたりな苗字である〝田中さん〟も含まれているだろう。
「田中さんが謂れのない罪で減給――だけならまだしも、左遷なんてことになったら、責任が取れますか」
おっしゃるとおりで、ぐうの音も出ません。
「申し訳ありませんでした」
契約満了前にクビになるなんて、派遣会社の信用問題だ。社員の夢どころか、次の仕事さえ危うい。
お先真っ暗な将来を憂いていると、課長の声色が変わった。
「いいですね、言い訳をせずに、即、謝罪というのは高評価です」
「えっ!?」
もしかして温情ですか!
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