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「え……あ、それは……」
「合成でしょう。今時こんな写真、誰でも作れますよ」
突然渦中に引き込まれ、しどろもどろになる私の代わりに、課長が答えてくれるが、
「彼女に聞いているんだ……で、どうなんだい、江本さん。嘘をついても調べれば分かることだよ」
「……」
課長にそっくりの目に、刺し貫かれる。
大企業の社長らしく、決して嘘を許さない厳しい目つき。
言い逃れは出来ない――。
観念して口を開こうとすると、それを制するように社長が続けた。
「言いたくないなら、それでいい……私はね、颯介の能力を買っているんだよ。君が望むなら、今回の件は不問としよう。社員として、この会社で颯介をサポートして貰うのもいいかもしれないね」
目尻を下げて微笑んだ彼の本性に、背筋が冷たくなった。
穏やかな言葉は、課長に向けた脅迫。
言うことを聞かなければ、この女をクビにするぞと――。
卑怯なやり方。
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