5話・シジミが狼にかわる夜

20/28
前へ
/529ページ
次へ
一度だけ天井を仰いだ彼は、妖艶に光る瞳を私に向けた。 体を転がされ、タンクトップとワンピースを器用に取り払われる。 下着だけの姿を、明りの下に晒す羞恥心に耐え切れず。 目を閉じて、シーツを握りしめた。 「怖がらないで」 手の甲をするりと撫でられ、力が緩んだのを見計らって、全ての指を絡められる。 ――――!? 突然感じた耳たぶへの刺激に『ひやぁ』と、かん高い声が漏れる。 熱くて、柔らかな唇の感触。 吐き出される息と一緒に、耳の中に舌が差し込まれたのが分かった。 「んっ……んん」 舌先が生み出す卑猥な水音が、脳のヒダをかき分けて、奥へ奥へと踏み込んでくる。 その音に支配されるのが怖くて、絡められた指に必死ですがった。 「か……ちょ……もう、無理で――あっ!」 イヤイヤをするように、首を振ってその刺激から逃れると、鎖骨に鋭い痛みを感じて悲鳴をあげた。
/529ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6535人が本棚に入れています
本棚に追加