5話・シジミが狼にかわる夜

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いっそ乱暴にしてくれたほうがいい―― そう思わせるくらい、残酷な悦楽を延々と与え続けているくせに。 彼の目には一切の邪心がなく。 ただ、艶然と微笑んでいた。 「そろそろ限界ですか?」 言われて、何度もうなずいた。 限界なんてとっくに越えている。 もう、楽にして欲しい―― それだけしか、考えられなかった。 「では、今度こそ約束してください。この作品が完成するまでは、僕の元から逃げないと」 「……っ、ます」 「聞こえません……ちゃんと目を見て」 髪に差し込まれた指によって上向かされ、至近距離で見つめられる。 さっきまでの笑みは消えて、怖いくらい真剣な表情だった。 まるで心の奥まで覗き込まれているようで、どうしても目を反らせなかった。
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