5話・シジミが狼にかわる夜

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「ひぃあああっ!」 指を折り曲げられて、ある一点を擦られた瞬間。 目の前で火花が散って、腰から下が違う生き物のように大きく跳ね上がった。 「ああ、ここがいいんですね」 「やっ、だめえっ! おねがっ……も、無理なのおっ!」 生理的な涙をまき散らしながら叫んだ。 もう気持ちいいのか、辛いのかさえ分からなくて。 目の前の大きな胸に、必死でしがみついた。 そうしないと、どこでもないどこかへ落ちていくような気がした。 「大丈夫だから、ほら……もっと、気持ちよくなって」 「も、分かんな……ぃ、ああっ、かっ……ちょう……怖い」 弱い所だけを優しく擦られながら、大きな波にのみ込まれそうになるのを必死で耐えた。 この波に飲まれたら、いったいどうなってしまうのか。 怖くてたまらなかった。 だけどもう……これ以上は…… 「も……やっ」 「強情ですね……なら、こっちはどうですか」 「いあああっ!」 くるりと円を描くようにお腹の裏を擦られた瞬間。 足の先から頭の先まで、熱い鉄の棒で貫かれたような快感が駆け抜けた。 背骨が折れるほどに、しなったあと。 落ちる―――― まるで底のない海に放り出されたように。 ゆっくりと、暗闇に落ちて行った。
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