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このまま抱いていたい気もしたが、目を覚まされると面倒だ。
彼女を起こさないよう、細心の注意を払って布団に寝かせた。
壁掛け時計を見上げると、てっぺんで針が重なっている。
今すぐ起こさなければ、終電に間に合わないが……
仕方がない。目が覚めたら車で送ろう。
掛け布団で体を覆ってから、唇に張り付いた髪を払ってやった。
喉が乾いているのだろうか。
唇がカサついている。
お茶を注いだグラスを、口元に近づけてみた。
「う……んっ」
よほど水分を欲していたのか、亀のように首を伸ばしてグラスに唇を寄せる。
少しだけグラスを傾けたが、やはり無理があるようだ。
口角から溢れた雫が、白い頬を濡らし……
それを追うように、小さく赤い舌が覗いた。
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