6話・狼がシジミにかわる朝

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PC画面に向き直った課長は、眼鏡を指で押し上げてから、キーボーを叩きはじめる。 先ほどまでの熱っぽさが嘘のように冷めきった横顔。 「こんなことをされるなんて、聞いてませんでした」 「……」 「どう考えても、酷いと思います」 「……」 「無視しないでくださいっ!」 言葉と同時に枕を投げつけると、抜群のコントロールで課長の顔面にヒットする。 「……っ、いい加減にしてくださいよ」 苛立った様子で近づいてきた彼に、布団をバサリとめくられる。 「ひゃ、変態っ!」 裸を見られて暴れたけれど、とんでもない力で押さえつけられて、あっと言う間にワンピースを着せられた。 「なっ……なにをっ、きゃあっ!」 躊躇なく抱き上げられて、思わず首にしがみつく。 「もう少し回復してからと思っていましたが、今からお送りします」 「始発で帰りますったら!」 「朝まで騒がれては迷惑です」 有無を言わさずに歩き出した課長に抱えられたまま、駐車場に連れて来られ、 「荷物を持って来ますので、少しお待ちください」 ビートルの助手席に押し込まれた。
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