6話・狼がシジミにかわる朝

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誰でもいい―― 彼に恋心を抱いているワケではない。 けれども人として、そんな物言いがあるだろうか。 あっけに取られ、それから猛烈な怒りがわいてきた。 ペットボトルを握りしめて、唇を噛む。 『最低です』と低い声が出た。 課長は何も答えなかった。 ドアポケットから煙草を取り出すと、今度は私に了承を得ることなく火を点ける。 抗議の声をあげようと口を開きかけ―― 課長の目の奥に、ハッとするほどの孤独が潜んでいるのを見つけた。 この人は、何を背負っているのだろう。 それを知りたいとは思わなかったけど、これ以上、彼を責める気にはなれず、そっと目を反らした。 窓を開けたせいで、生ぬるい風が車内を通り過ぎ。 煙草の匂いが鼻孔をかすめた。
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