1話・シジミの皮を被った……
1/2

1話・シジミの皮を被った……

* * * 「桜色の秘裂から、とめどなく蜜が溢れる。 無骨な指が固く腫れあがった芯を押しつぶすと、カナコの体は、電流に貫かれたように浮き上がった。 たまらず火照った顔を埋めようと、波打つシーツを手繰り寄せるが、両手を掴まれ、シーツに沈められる。 『隠すな』と低い声に鼓膜を揺らされだけで、カッと全身が熱くなった。 奪われたい、征服されたい。何もかも忘れ――」 「もう、結構です」 室内に響く冷めきった声。 淫猥にゆるんでいた空気が、ピリリと張り詰めた。 はあ……またか。 「今度は何が、お気に召さなかったのですか?」 つとめて冷静に質問すると、時代遅れな黒縁メガネ。分厚いレンズの奥から、極小の目に睨まれる。 「艶のない声、色気のない表情、エロティシズムの欠片もない抑揚。全てが気に入りません」 「うら若き乙女に、官能小説の朗読をさせるだけで、充分にエロティックだと思うのですが」 「……うら若き」 「なにか」 「図々しいにもほどがある」 プッチン―― 堪忍袋の緒が切れるときって、本当に音がするんだ。