6429人が本棚に入れています
本棚に追加
/529ページ
7話・営業トップは伊達じゃない
* * *
この数日、空の透明度が少しずつ増している気がする。
残暑が厳しく秋の気配を見失いそうだけど、空の色は季節の移り変わりを、こっそりと教えてくれる。
楽市不動産に勤めて、半年。
退社後、時間に余裕がある日は、公園のベンチに座って空を見上げるのが習慣になっている。
昔から空が好きだった。
ぼんやりと見上げていると、自分が空っぽになって、そのうち透き通って……仕舞いには溶けて無くなるような気がする。
この世から消えてしまいたい。
なんて、悲観的になっているのではない。
ダブルワークの隙間時間。
ほんのひと時、なにもかも……
実体までも手放して、空の青と混ざりあう感覚は心地の良いものだったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!