8話・キスとスキ

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8話・キスとスキ

* * * 「50回目」 「……へ?」 「君がこの数時間で吐いた、ため息の回数。いい加減、鬱陶しいです」 「はあ、すいません」 「何を吸わないのですか? 謝罪のつもりなら、す・み・ま・せ・ん、ですよ」 「……すみません」 課長のイヤミに、本日51回目のため息を吐き出した。 お昼過ぎにここに来て、本の発注や、彼が手掛けている歴史小説の登場人物別年表を作成していると、あっという間に時間が過ぎてしまったようだ。 気がつくと、窓の外が茜色に染まっている。 「あ、課長。これ、終わりました」 プリントアウトした年表を、窓際のデスクに座っている課長に手渡した。 「腑抜けていても、仕事は完璧ですね」 「ありがとうございます」 時系列を一目で把握できるようにと、合戦・同盟・主人公の勝敗などを色分けして、各武将の年表を並列に配置したのだけど、気に入って頂けたらしい。
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