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10話・嵐の夜に
* * *
「お先でした」
お風呂から上がって仕事部屋に戻ると、課長は着替えもせず、濡れたシャツの上にバスタオルを羽織っていた。
「よく温まりましたか」
「はい、ありがとうございました」
「まだ髪が濡れていますね。乾かさないと風邪を引きますよ」
自分だって、びしょ濡れのくせに……
「コレ、寒ければ、使ってくださいね」
差し出されたブランケットを受け取ると、彼は更に続ける。
「温かいお茶で体を温めて、そうそう、足元を冷やすといけません。靴下はお持ちですか? 無ければ未使用のものを――」
「分かりましたからっ!」
やたらと世話を焼きたがるのを遮って、風呂場に連行した。
「課長こそ、よーく温まって下さいね」
引き戸を閉めて、和室に戻る。
ひとりになった途端、脱力感に襲われた。
はあっ――と、ため息を吐きながら、畳の上に大の字に転がる。
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