6話・狼がシジミにかわる朝

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6話・狼がシジミにかわる朝

* * * やりすぎた…… 正気に戻った途端に、自責の念に押し潰されそうになった。 腕の中でクタリと脱力する彼女の身体は、信じられないほどに軽い。 力を込めれば抱き潰してしまいそうで、恐怖すら感じる。 しっかり、食べているのだろうか…… そういえば、PC画面の見過ぎで頭痛がすると言っていた。 どうせまた庶務課の課長や女子社員が、分別なく雑務を押し付けたのだろう。 ああ、僕も彼女に仕事を投げたんだった。 疲れた体を引きずって、ここに来たのだろうに。 それを僕というヤツは―――― 自分は理性の塊だと思っていた。 彼女に対しても、小説のモデルとして節度のある接触をはかるつもりだった。 しかし潤んだ目で『優しくして下さい』と言われたあたりから、雲行きが怪しくなった。 僕のことが恐ろしくて堪らない。 そんな目をして震えているくせに…… 感じやすい体を持て余して、恐怖の根源であるはずの僕に縋りつく。
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