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12時くらいに希輝は一階の台所へ降りてきた。めそめそ泣いた後、直ぐに寝落ちてしまったらしい。
リビングのテーブルの上に、一枚の紙切れが置いてあった。
『お昼ご飯はテーブルの上に置いてあるやつと炊飯器の中のご飯全部食べちゃって。洗濯物干すのと畳むの、掃除機とご飯3合炊いといて〜。よろしく〜。母』
きっと希輝を元気づける為にわざとおちゃらけた文章なのだろう。分かっていても、希輝は苛苛した。こんな自分に毎日ご飯を作ってくれるだけでも有難いと言うのに。
スマホを弄りながらもそもそと母が作り置きしてくれた朝食兼昼食を食べる。ここに親が居たら、行儀が悪いと叱られるので普段はやらないが。
スマホの端末に入っているゲームアプリは単なる暇潰しだ。普段はゲームの日課をクリアして、ぼちぼちとイベントを進めるのだが何だか今日はログインすらする気持ちが起きない。動画サイトも見る気にならず、希輝は暇を持て余していた。
ふと、何の気なしにテレビを付けてみると昼間のワイドショーがやっていた。そこには『近頃増加している自殺について』政治家やタレントが同情するような顔で意見等を語っていた。
「一昨日くらいの事件でしたっけ。高校生の女の子が自殺したやつ」
「そうです。確か、クラスでの虐めが原因で飛び降り自殺を計ったそうですね」
「可哀想に…。辛かったんでしょうね」
「何故、これに周りの人は気付いてあげられなかったのでしょうか。少しくらいなら手を差し伸べることくらい出来たんじゃないんでしょうか。」
そこまで聞いて、希輝はテレビの電源を消し、リモコンをソファの上に放り投げた。
思ってもいないくせに。
そんな事を言うな。
自分の身に起きた事じゃなければ当の本人と同じくらいの悲しさや悔しさを抱ける訳が無い。口ではなんとでも言える。だが、その後は何事も無かったかのように馬鹿みたいに笑って過ごすのだ。そんな当たり前の事に、何故か希輝はムカついていた。
本人が死にたいくらい辛い人生だったならそうさせればいい。
手を差し伸べられたって、それは単なる自己満足でしかない。
何故、自分の望んだ事で可哀想などと言われなければならないのだ。
「ご馳走様」
食べ終わった食器を流しに置き、希輝はパジャマから洋服へ着替える事にした。
希輝は自分の左手首を触り、血が止まったか確認してからあの洋服の山から今日の分を漁った。
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