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「……やっとフルコン取れた…」
ソファの上で寝転がりながら、今流行っているスマホのリズムゲームでノーツを叩いていた。
対戦型ゲームは苦手なものの、リズムゲームやロールプレイングゲームは得意で好きだ。
元々、音楽が好きでリズム感もあった事から、色んな形のリズムゲームで遊んできた。練習を積み重ねれば上手くなれたので、ゲームセンターへ行っても必ず遊ぶ。
ロールプレイングゲームは暇潰しにも丁度良いし、キャラクターを強く育てた分だけ強くなってくれる。途中で、倒せない敵が出てきて詰んだとしても、そのキャラクターをひたすら強くさせていけばいいので攻略方法も分かっている。
逆に、京吾はスマホアプリでは無く、主にテレビゲームの方で遊んでいる。
自分で操作して敵をバッタバッタ倒しているのを見ると、自分には絶対出来ないと思う。どうして敵がそう動くのかが分かったのだろうとか、どんな立ち回りをすれば勝てるのかとか、疑問ばかり沸いてくる。
実際にやってみたらいいよと言われても、京吾みたいに上手く出来ないので、もしかしたら、こればっかりは元々の才能等が関係しているのかもしれないと思ったりする。
リズムゲームはノーツを覚えたり実際にプレイしている人の動画を見れば、その通りに手を動かしたら出来るのに、対戦ゲームはその通りにやってみても上手くいかない事が多い。
言ってしまえば、ゲームなんて沢山やり込んで感覚を掴んでしまえば出来るようになると思うけど、対戦ゲームで負けたら悔しいし…。
最近は、いくらゲームをやっていても心が満たされない。
それはきっと、こんな事をしてはいけないと思っているからだ。
それは本当の事で、希輝はこれから一生若年無業者でいくつもりも無く、寧ろ高校に通いたい方だ。夢も特に無いけど。
そう思っているのに、なかなか勉強をする気力が湧かない。1年遅れて高校生になるのも嫌なので、希輝は焦るばかりだった。
こういう時、記憶力が良くて、見ただけで覚えてしまったり、理解力が高く、基礎が出来たら応用問題もスラスラ解ける脳みそだったらいいのにと思う。
生憎、希輝はどちらとも持ち合わせていない。テストではいつも中間位にいる、至って普通だ(テストは一年生の頃に二回しか受けていないが)。だから、地道に沢山やっていくしか方法は無い。
それは、今までずっと休んできて、授業もまともに受けていない希輝にとっては苦痛でしか無かった。
塾にも通った事はあるが、勉強、勉強でリラックス出来ず、帰ってきたら夕食を食べるのも忘れるほど疲れて寝てしまい、しかもその疲れが翌日まで出てくるので行くのを止めた。そもそも、塾は勉強をやりに行く所なのだから当然だ。
はぁっと大きな溜息をつく。これは希輝の中で段々癖になってきている。
憂鬱な感情を吹き飛ばすかのように、スマホの音量を上げる。
「今日のライブ、いつもより調子良かったね!」
キャラクターの台詞をタップして飛ばしていき、また違う曲のフルコンボを狙う。
耳に響くタップ音が心地良かった。
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