全員集合 Conglomerate~集団

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「まあそう言う訳で、このクラスの生徒は全員両親がいない。けどその代り、このクラスの生徒は全員寮に入っている。つまり、他のクラスの連中よりも絆がより強くなる可能性が高い訳だ」 そうだったんだ・・。 じゃあアイも・・。 そう言えば、 さっき見つけたタンポポが咲いてる所は学園の敷地内にあって、 しかもあの道の先は女子寮しか無い。 基本的に女子寮に住んでいる人にしか見つけられないよね・・。 アイが『桜よりもタンポポが好き』という衝撃事実を知って驚いたせいで、 その事をすっかり忘れてしまっていた・・。 あれ? じゃあ、 このクラスの他の女子生徒は私達に気付かなかったのかな? それとも、私達よりも早く寮を出たのかな? ひょっとして・・。 私達に気付いても、 無視したって事~?! いやいや! ただ単に気付かなかっただけだよね! うん! きっとそうだ! そうに違いない! そうでありますように・・。 「じゃあそろそろ次行ってみようか!」 シャルがそう言うと、先ほど、机を教室のぎりぎり後ろまで下げていた男子生徒が立ち上がった。 「『大谷 貞樹』(オオヤ テイキ)です」 ん? さっきは気づかなかったけど・・ なかなかのイケメンじゃん!! テイキは桃色の髪に紺色の瞳。 外見的な特徴は、ユウキも思ったようにかなりのイケメンだ。 それは髪の色のおかげで、より顕著になっている。 それはまるで、桜のような鮮やかな色だからだ。 「僕の趣味は、野鳥の観察(Observation)です。一応、母が鳥類学者(Ornithologist)だった事もあって、僕も鳥には詳しいです。特技は、大きなケガを治す事が出来る事ですね。父が整形外科医(Orthopedics)だったので、僕も父に色々と教わりました」 うわあ・・。 すごいなぁ・・。 「先ほど僕は『女性恐怖症』と言いましたが、決して女性が嫌いな訳じゃありません!女性が好きです!!好きなんです!!!その事は絶対に誤解されたくありません!!!!」 おおお・・。 気合入ってるなぁ・・。 「では何故、僕が女性恐怖所になったのかと言うと・・」 ドキドキ・・ ワクワク・・ 「僕は、ストーカーに殺されそうになった事があるからです」 え・・ 「その人は20代前半ぐらいの女性だったのですが、僕はまるで知らない人でした。でも、僕の事をストーカーしてる事には気づいていました。ですが、危害を加える気も無さそうだったので放っておいたのです。そうしたら・・」 テイキは一瞬言葉を飲み込んだ。 「そうしたら、ある日突然、包丁で僕の心臓を刺そうとしてきました。『あなたを殺して私も死ぬ!!』と叫んでです。僕は咄嗟にかわそうとしましたが、包丁は僕の腹部を深く突き刺しました。僕を刺した後、その女性はその包丁を僕の腹部から抜いた後、自分に刺して自殺しました。僕はその場から動けませんでしたが、幸い、傷の縫い方を教わって行ったので、その場で自分で自分の腹部を縫い合わせました。もしそれがうまく出来ていなかったら、今頃はもうこの世にいなかったでしょう。そんな訳で、僕は女性恐怖症になったのです」 ううう・・。 なんて悲しい話なんだ・・。 それなのに・・。 ドキドキワクワクしてたなんて、 私は何て薄情な女なんだ~!! 「でも僕自身、女性恐怖症は治したい。どうか女子生徒の皆、ご協力よろしくお願いします!!」 と言う訳で、テイキが着席した。 今回も悲しくて辛い話だったので、拍手はまばらだった。 「う~ん・・。ホント、人生色々あるもんだよねぇ~。まあ、アタシも女なんでね。オオヤの女性恐怖症が治せるよう協力してやるよ。それじゃあ次!」 シャルの言葉を受けて、ユウキのすぐ後ろの男子生徒が立ち上がった。 「『次位 圭太』(ジイ ケイタ)だ・・」 低音の声が響いた。 ケイタは髪の色が紺色で、瞳の色が深緑。 ちょっと暗い表情をしている。 性格が暗いのか、はたまたクールなのか・・。 まだ判断はつかない。 他の特徴と言えば、かなり身体つきがしっかりしている。 おそらく筋肉ムキムキなのだろう。 ケイタの体から、オーラみたいなパワーがにじみ出ているのが分かる。 「趣味は色んな所の地理を調べる事だ・・。母が地理学者(Geographer)だったのでね・・。特技は体操と体術だ・・。父が体操選手(Gymnast)だった事も多少は関係あるかも知れない・・。今は、体操の動きを利用した体術の技の研究をしている・・。よろしく頼む・・」 ケイタが着席すると拍手が起きた。 今回は別に暗い話では無かったのだが、本人が暗いため拍手はまばらだった。 「ん~・・。自分の事を紹介しているんだから、もうちょっと明るくやれんかねぇ~?」 シャルがケイタに苦言を言った。 「これが『俺』だっていう、自己紹介になったと思いますが・・?」 「それはそうなんだけどねぇ。まあ良いか。じゃあ次!」 ケイタの後ろに座っている男子生徒が立ち上がった。 「『打武流 ピーター』(ダブル ピーター)デ~ス!!」 高音の声が響いた。 ピーターは朱色の髪に茶色の瞳。 見た目は軽そうな男だが、中身も軽そうだ。 「吾輩の趣味は絵を描く事デ~ス!画家(Painter)だった父の影響デ~ス!特技は占いデ~ス!!手相占いが得意デ~ス!!手相見(Palmist)だった母から教わりまシタ~!父との出会いも手相占いだった相デ~ス!!父が母の絵を描いたお礼に母が父の手相を占ったら、目の前に運命の人がいるって出た相デ~ス!!それで2人は結婚した相デ~ス!!」 うわぁ・・。 もしかして・・。 お父さん、騙された・・? 「後、オオヤ君と同じく、女性大好きデ~ス!!女性は無料で絵を書いてあげるし、手相占いもして差し上げマスヨ~?以上デ~ス!!皆さんよろしくデ~ス!!」 ピーターが着席すると、まばらな拍手が起きた。 『女性が大好き』と言う部分に女子生徒が、『女性は無料』という部分に男子生徒が引っ掛かりを覚えたのかも知れない。
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