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決闘日和!
「いよおおおおおし!絶好の、決闘日和だああああ!!」
俺の友人、倖田雅彦はそう叫ぶと、一目散に特定の下駄箱まで走っていった。そして滑るように戻ってきた。俺は思う。お前はアタマがおかしくなったのか、と。それともアタマのネジが外れたのかと。――どっちもさほど意味は変わらないような気がするが、まあそれはそれである。
「……決闘日和、ってどゆこと?」
これも友達、というか小学校の時からの幼馴染としての努めである。金髪でチャラそう、不良っぽく見える――が実は純情で超絶チキンで照れ屋、おまけにバカみたいに暑苦しいという属性盛りすぎの面倒くさい友人、それが倖田雅彦という人物だ。高校に入って早々、不良漫画を読んで憧れたとか言い出して髪をツンツンの金髪に染め、テッペン取るぞと意気込んで入学してから早三ヶ月。進学校であるこの学校に不良らしい不良がおらず、結果ただ浮いて生徒指導室に呼び出されて心配されて終わり、黒歴史を量産したとしょぼくれていた姿は記憶に新しい。
しかも、金髪姿がそこそこクラスメートに好評だったせいで(ぼっちゃんどもが多い学校なせで、不良ルックな彼の見た目が珍しかったのだろう)染めた髪を戻すに戻せないでいるというしょうもない状態。そして今の現状である。突然決闘だのなんだのと叫んでどこぞに飛び出して、即行で帰ってきた彼。一体何がしたいというのか。
「……校舎裏に、ある相手を呼び出してきたのだ」
ふふふ、と雅彦は拳を握って力説する。
「今日ほど決闘日和と言える日はない!俺は必ず、この戦いに勝利して見せる!!」
「……誰に決闘状送りつけたんだとか、一体何を賭けてんだとか、いろいろ言いたいことはあるけどさあ。とりあえず一個ツッコんでいい?」
俺は白目になり、すっと外を指差した。ちなみに、俺達が今いるのは校舎の下駄箱。入口はガラス張りになっており、時刻は夕方である。そして。
「決闘日和って何でそうなんの。……外、土砂降りの雨なんですが?」
そうなのだ。何がどうして決闘日和なんてことになるのか。外は雨が降っている。めっちゃ降っている。これでもかというほど降っている。ついでに雷も鳴っていて、傘を差していても確実に濡れそうな勢いなのだけども。
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