君の傘で雨宿り

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「電車が来るのは……10分後か」 高森君の後に続き待合室に入り、それぞれの電車が来るのを待つ。隣り合わせで座るのを躊躇い、一つ座席を空けて座る。 「た、高森君ありがとう」 「どういたしまして」 お礼の言葉を言った後、これといった会話もなく途切れてしまった。 沈黙を息苦しく感じる。 『何か話した方がいいのだろうか?』と、頭の中を色んな話題が飛び交う。知恵熱が出そうな程、脳内をフル回転させる。 でも、高森君がどんな話を好むかなんて知らない。知らないなら、下手に話をするより黙っていた方がいいのかも。 ぐるぐると考えている途中、沈黙を破ったのは高森君だった。 「僕の乗る電車が来た。じゃあお先に」 「あ、あの……本当に助かりました。ありがとう」   あたふたしながら、またお礼を言う。 不意に高森君が近づく。 「大きめの傘を用意していたのは、相合い傘したかったからだって言ったらどうする?」   耳元でそう囁かれた。 とっさに耳を押さえ、飛び出しそうな程激しく動き高鳴る胸を押さえ、高森君を見た。全身の温度が確実に上昇している。 その反応を嬉しそうに見つめ、目を細めながらまた静かに笑った。 「あっ、この傘使って。まだ雨もやみそうにないし」   もう一度別れの挨拶を告げ、何事もなかった様に待合室を出て電車に乗って行ってしまった。私は発せられた言葉の意味をすぐには飲み込めず、硬直しきったままそれを見送る。 火照った顔を両手で挟む。 一人残された私の近くには傘が置かれている。 一人で入るには大きすぎる傘。 だんだんと冷静さを取り戻してきた頭と心臓。大きく深呼吸をし、もう一度言われた言葉を反芻する。 ――相合い傘をしたかったって……私と? 『そのままの意味』として捉えてもいいのだろうか?  でも、あまり素直に受け入れるのは良くないのでは?   
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