君の傘で雨宿り

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午後の授業中、雷鳴が鳴り雨が降り出した。内心でガッツポーズしたのはここだけの話。 傘を返すタイミングが見つからないまま放課後。 いつものように玄関先で友達と別れ、靴を履き替えて外へ出ると、キュッと心臓が軋んだ。 雨の降る空に視線を送る後ろ姿を見つけたからだ。昨日とは逆の立場。 「今日、傘は持ってきてないんだね」 少し意地悪な事を言いながら隣に立つ。 「貸した傘が今日戻ってくると思って。朝は必要なかったし」 「そういえば、昨日の帰りは大丈夫だった?」 「大丈夫だったよ。雨もあがってたし」 「そう……。傘、私が持ってこないかもって考えなかった?」 私は借りていた傘を手渡した。 視線がぶつかり高森君に笑みがこぼれる。自信に満ちた顔。 「昨日の三和さんの反応を見たら、大丈夫かなって。入ってく?」 受け取った傘を開き、少し傾けながら言った。 「入る!」 「今日は即答だね。気持ちが動いてくれたのかな?」 ――そうだよ! なんて叫んでやりたかった。 言葉にする代わりに行動に移した。グイッと傘を持つ手を引っ張り、二人で歩幅を合わせ歩き出す。 雨粒が放つ鈍い音を受け止めながら駅へと向かう。
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