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「私の折りたたみの傘、ちゃんと使えていたらどうしたの?」
「その時は声をかけるのは諦めて、違う方法を考える」
「じゃあ……玄関で雨宿りしていたのが、私じゃない誰かでも声をかけた?」
「しないだろうね、期待させたくないし。三和さんだから声をかけた」
私は立ち止まり、それにつられて高森君も止まる。
「私は……私は期待してもいいの?」
体全体から湯気が出そうな程熱い。心臓がこれでもかという具合に跳ね上る。ここで引きたくはなかったし、持っていかれた『心の在処』を確かめたかった。
「そうだね。そのまま素直に受け止めてもらえると嬉しい。僕の一方通行な想いではないって事だよね」
私は勢いよく首を縦に振る。
それを見た高森君の笑みは静かさを含んだものではなく、とても嬉しそうなものだった。
その顔つきで、私の中でくすぶっていた『期待』が『好き』へと変わり、心に幸せを運んできた。
互いの想いが重なる。
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