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「――――はい、システム課」  俺が電話に出ると、一瞬息を飲む気配がするのは気のせいか。 「あ、あの、総務の城田です。お疲れさまです。今受付で、システム管理課のストック用紙が届いてるんですけど、宅急便の方にそちらまで届けてもらっていいですか?」 「ああ、いい。取りに行く」  受付まで行くと、台車に載った段ボール箱三つと並んでぽつんと待ってる城田が居た。 「……また次あったら、受領印だけやってくれたら置いといていいからな」 「……すいません」  しょげたように顔を伏せるのを見るとフォローに困る。 「いや、……怒ってんじゃなくて、その、総務だからって他の課の荷物まで全部面倒見なくていいんだ、って言ってるだけだ」 「……はい」  言えば言うほど怯えさせそうなので 、台車を押して行こうとすると 「あ、開けます」 と、城田は前に回ってドアを開けた。 「……サンキュ」 「いいえ。あ、管理部のドアも開けましょうか?」  結局サーバー室まで城田はついて来た。  まだ少しおどおどした様子もあるが、基本的には気のつく奴なんだろうと思った。 「……ありがとな」 「いいえ」 と初めて城田が笑ったのを見た俺の心境は、男としてどうこうではなく、そんな風に笑えるくらいこの新しい居場所に馴染んだのなら、良かった、というところだった。
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