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「え?いえ、全然そういうんじゃなくて……その、海棠さんだって昨日午前中は仕事だったんだし、ゆっくり休みたいでしょうから、あたしが居たら目障りというか」
すると、向き合ってテーブルに頬杖をついた彼は不機嫌そうに唇をねじ曲げる。
「……一回口にしたこと取り消す気は無いから、一度だけ確認の意味で聞くぞ。お前、昨日から今までの流れでどこか納得いかないことあるか」
「は?……いえ、無いです」
「お前が問題無いなら、こっちだって問題無い。お前がどうしても独りにならなきゃ落ち着けないってことじゃなければ、しばらくはこっから会社通ってもらったっていいくらいだ」
頬が引きつりそうなほど顔をしかめた彼をあたしは眺めて思った。すごく思い遣ってくれるのは分かるけど、どうしてそこまで苦虫噛み潰したような顔をするんだろう。
「ありがとうございます。でも」
ガタン、と音をさせて彼は椅子から立ち上がり、こちらに回って来る。テーブルに片手をついてあたしの顔を覗きこむと、そのまま彼は無言で唇を重ねた。ふわりとあの香りが立ちのぼって、あたしを包む空気と混じり合う。
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