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四月末、連休前に城田を含めた数人の歓迎会があった。酒の席は好きでないので仕事にかこつけて逃げるつもりでいたが、出る予定だった同僚が、子供が熱を出したとかで早く帰らなければならなくなり、結局行かされるはめになった。
「……あー……ったりぃな」
ビルの非常階段に座り込んで煙草をふかしていると、その辺の不良と変わらねえな、と自分で思う。
酒も、酔った人間と話すのも好きじゃない。そういう人間が集う場所も嫌だ。
元々人ごみ自体が……と三十路の男がぼやいても仕方ないのは分かっている。
人の中で生きて行くには妥協しなければならないこともある。
双子の弟は実家の寺を継いで住職を務めているが、じゃあ代わりにそちらが出来たかと言えばその方がもっと嫌だ。
毎日毎日葬式に法事、人の悲しみと涙に向き合ってそれを慰めてなど俺には出来ない。
煙草二本を吸って腰を上げ、非常階段のドアを開けると
「わっ」
と間近で女の声がした。城田だった。
「……なんだ。こんなところで」
「……お疲れ様です。海棠さんは?」
「俺は煙草。喫煙所がねえから」
「あ。……すいません。びっくりして」
「城田は。まさか煙草じゃねえだろ」
そう言うと、彼女は酒で少し上気した顔を曇らせる。
「……せっかく歓迎会開いて頂いてるのにいけないと思うんですけど、……ちょっと外の空気吸おうかなって……すいません」
「別に謝らなくていい。疲れたなら席外して休めばいいけど、そこはやめとけ」
「え?」
「男はいいけど、女ひとりでそんなとこに居て、タチ悪いのに絡まれたりしたら困るだろ。外出るなら下行け」
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