僕とお姉さん

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 これじゃあ、何も買えない。  僕は泣き出しそうになりながら、その鮭とおかかのおにぎりを手に取ると、そのまま扉の方へ走り出した。  その時だった。僕の手を思い切り握りしめ、 「待ちなさい!」  と、声を掛けられた。僕は、おにぎりを抱えて、泣いた。……捕まってしまった。  僕はおそるおそる、握られた手の先を見ると、それは店員さんではなくて、セーラー服を着た、女子高生のお姉さんだった。 「ちょっとそれ、渡して」  そのお姉さんが真剣な表情で言うから、僕は怖くなって、持っていたおにぎりを渡した。  ああ、僕のご飯がなくなってしまった。  すると、お姉さんはくるりとレジの方を向くと、そのおにぎりを店員さんに渡して、会計を済ませた。  僕は不思議そうにそれを見ていると、お姉さんはレジ袋に入ったそのおにぎりを持って、僕に近づくと、 「外で食べなよ」  言って、外へ出た。そこにはコンビニの屋根の下に、ベンチがある。  雨が降っていても、なんとか凌げた。風が少し収まっていた。  お姉さんはベンチをハンカチで濡れていたところを拭くと、座って、隣をポンポンと叩いた。にこりと微笑むお姉さん。僕はなんだか緊張して、そこに座った。 「はい、どうぞ」  お姉さんが僕におにぎりを渡してくれた。僕はフィルムをはがして、それにかぶりついた。  むしゃむしゃと思い切りかぶりつく。ああ、美味しい。温かくなくても、お米の塩味と、鮭の塩味、それから僕の涙の味が重なって、僕は下を向いたまま食べ続けた。  すると、お姉さんはがさごそとバッグから水筒を取り出すと、僕の目の前に、コップを差し出した。 「あんまり早く食べると、喉詰まっちゃうよ。お茶どうぞ」  僕は食べるのを止めると、お姉さんの顔を覗いた。するとお姉さんは笑って、 「毒なんか入ってないよ。じゃあ、私が先に飲もうか」  言って、そのコップのお茶を飲んだ。
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