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「デクノボートヨバレ」
コンビニに着くと、公衆電話から電話番号に電話した。すると、
『やすらぎ園です』
「あ、あの! 鈴お姉ちゃんが! 大変なんです!」
『鈴ちゃんが!?』
僕はあったことを伝えると、その電話に出た人が僕の家に来てくれるようだった。
僕は家まで走って向かうと、そこにはすでに車から出てきたおばさんがいた。僕を見ると、
「その痣、さっきの子ね」
「は、はい」
言って、僕は家の玄関を開けた。すると中から、お姉さんの悲鳴が聞こえた。おばさんはそれを聞くとすぐに中に入って、寝室を開けた。するとお姉さんの制服が乱れていて、おばさんが、
「児童保護施設の者です! 児童暴行で警察に連絡済です。もうすぐ警察が来ますよ!」
言うと、お母さんと知らない男の人の顔が豹変し、お姉さんは僕の方へ逃げてきた。
それから警察の人たちが来て、事情聴取というものをすると、お母さんと知らない男の人は警察へ連れて行かれた。なのに、僕は妙に安心してしまっていた。
すると、駆けつけてくれたおばさんが、
「もう大丈夫よ。ソラくん。君も鈴ちゃんと同じところに行きましょう」
そう言ってくれると、僕は頷いて、お姉さんも、
「うん。きっと色々あると思うけど、私とソラくんは姉弟になれると思う」
「え? 本当?」
「うん。私も孤児なんだ。両親、火事で亡くなってしまったし。今は保護施設で沢山の兄弟と暮らしてるの」
話を聞くと、どうやらそこは、親がいない子たちのいる場所らしかった。僕ももう、お母さんたちと暮らすのは嫌だったから、その申し出は嬉しかった。
でも、僕は少し困って、
「で、でも。またお姉さんに助けて貰っちゃった。僕、お金ないからお礼もまた出来ない……」
ボソリと言うと、お姉さんはじっと僕を見つめると、
「お金より大切なものがあるんだよ。デクノボーって言われてたけど、デクノボーで良いじゃない。ソラくんはまだ子供なんだよ。お金なんかなくても、生まれてきて、私の弟になってくれる。家族になってくれるんだもん。それで十分」
お姉さんは優しくそういうと、僕はまた泣いた。
それから、僕はその施設の子になった。デクノボーでも良いんだ。
お金が無くても、大切なものは、「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」、お姉さんみたいに立ち向かうことなんだ。
<了>
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