インタビュー

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よく記者会見などが行われるような場所。 丸椅子2つ。右手にはインタビュアー。もう片方にはラジカセが置かれてる。 それらに必要な場所なんてせいぜい半径3mでお釣りがくる。 必要なのは記者たちを入れるスペース。 聞いたことある新聞社はもちろん、テレビの取材もちらほら。 全てはそのラジカセへの興味だ。 電池式なのか、線の類が引かれている様子はない。取材者達の要望でスピーカーを使ってくれなどの要望もあったが、特例等が認められることはなかった。 別段高級なラジカセでも、珍しい見た目をしているわけでもない。 彼らの興味はその中身だ。 部屋の明かりが落ち、主催者の前置き。注意事項の確認等を長々と行う。 「以上のことが守られなかった場合。無条件かつ無許可での退出を命じます。異論はありませんか」 もちろんのこと異議を唱えるものはなかった。 「ではよろしくお願いします」 主催者に向けられたライトが落ち、ラジカセとインタビュアーにライトが当てられる。 インタビュアーが立ち上がりラジカセのスイッチを押す。 会見でよくあるフラッシュをたく行為も禁止事項であるためしばらく静寂な時間が流れる。 ラジカセ特有の機械音にすら何人もの取材者がマイクで拾う最大限の努力をした。 1分、2分と経つもラジカセから音声が流れる気配がない。 きっかけはひょんなことだった、前の方にいた取材者が咳をした。 「‥ん、誰かいるの」 初めて聞こえた、ラジカセからの音声。 即座にインタビュアーがマイクを向ける。 「こんにちは」 「こんにちは‥」 少し戸惑ったような様子のそれは当たり障りない返事をする。 「私ワキコと申します。お名前を聞いてもよろしいですか」 「名前ですか。えっと、それよりもこれはどういった状態なんですかね」 それを除いたこの場にいるもの全てが確信したであろう。それの声はまさに。 「ハヤシタクミさんでいらっしゃいますか」 「はい‥」 会場全体がどよめく。 「あなたは今どこにいらっしゃいますか」
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