インタビュー

2/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「…」 質問自体は理解はしているだろう。しかし返答がない。 「わからないということですか」 インタビュアーは足早に結論を求める。 「はい‥」 再び会場がどよめく。 「う‥」 会場のどよめきが向こう側に伝わったのか、それは少し怯えた様子だ。 インタビュアーが無言で取材陣に目配せをし収めさせた。 「どの様な場所か教えてもらうことは可能ですか。何かが近くにあるなど教えていただけませんか」 「綺麗な所です。でも見覚えがないです。幻覚を見てるような感覚です。そうですね。草、鯨、川‥それから見たことない物がいくつか」 「説明していただけますか」 「うーん。実体というよりかはイメージに近い。何だか言葉で表せないですね。うーん。なんというか、血管隅々まで楽しさで溢れていて、でも少し気持ち悪くて、トマトのように赤いけど絵の具を混ぜたみたいに汚い色をしてて」 訳のわからない言葉を羅列する。 しかしその一言一句も宝と言わんばかりに、記者たちは筆をすすめる。 「次の質問を良いでしょうか」 「ちょっと待って下さい。突然一方的に次から次へと何なんですか。僕の質問にも答えてください」 「もちろんです」 「そちらはどうなっていますか」 「えーとですね。あなたを中心に右手に私。その周りを取り囲むように記者が居るような感じです」 「何故そのような事になっているんですか」 「それもこれもあなたのお話を聞きに来ているのです。おそらく皆さんそうだと思いますよ」 「…」 恐らくそれができている状況把握は2%にも満たないだろう。 言葉が詰まるそれ。 「質問を続けさせていただいてもよろしいでしょうか」 「ああ、はい。また後で質問してもよろしいですか」 「もちろんです」 ラジカセの向こう側からは大きな溜め息が聞こえる。 「いつからそこにいらっしゃったのですか。またはそこにいると自覚なされたのはいつからでしょうか」 「今です。あなた、いやあなた方から声をかけられてからです」 「何故そこにいらっしゃるのでしょうか。知り得る限りの範囲でよろしいのでお答えください」 「全くわかりません」 「その場所にご自身がいらっしゃることに疑問はお有りでしょうか」 「はい」 三度会場がどよめく。 そして次の質問でインタビュアーが核心にせまる。 「ご自身が亡くなられたのは自覚されていらっしゃいますか」 「!!!…」 返事がない。 ラジカセは無音になる。 恐らく向こう側では様々な葛藤が起きているだろう。そう予測するしかできなかった。 流石のインタビュアーもこればかりは待つしかない。 5分経ったかというところ、向こう側から返事が来た。 「知ってたんだと思います」 「というのは」 「思い出したというかなんというか。あなたの言葉で自覚しました」 「よろしければ今の心情の方をお教えいただけませんか」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!