インタビュー

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ジャーナリスト兼新聞記者である、トサヨシユキはまだ懐疑的であった。 一週間ほど前にニュースで流れたラジカセ。 次の日の新聞はどこもこのニュースのことばかり。 ついに成功した。人類初。人類最大の発明。 「死者と話せる‥ねえ‥」 彼はそれらの記事を会社で、他の新聞社の記事で知る。 最初は、他の新聞社に乗り遅れたという気持ちしかなかった。 しかし段々とその気持ちは歪曲していった。 「本当に死者と話せるわけ無いだろ。しかもなんだ、発明したのはど田舎の電気屋のおっさんだって。ふざけるな。こんなことを簡単に信じるやつは頭のネジが足りてないんだな」 そう同僚達に話したその次の日、ラジカセの発明者がそれの公開会見を行うことを発表した。 一つの出版社から送れる人数は限られていたが、ヨシユキはその中の一人に選ばれた。 編集長から言い渡された汚名挽回の機会。彼は正直、その時には既に信じ始めていた。会見まで開いて小細工なしの舞台。見え透いた嘘はつけないほどの大舞台。 そしてここに来て、始まった。 その時点で彼は真面目に取材を行おうと決心したのだ。このラジカセが嘘などという考えは完全に消した、と彼は思っていた。 しかし火種は残っていた。いつも通りの会見の注意は全く耳に入らない。 都内の某ビルの高層階。彼は外をみつめて物思いにふける。 会見が始まる。 会見はインタビュアーの質問にそれが答えていく様が続く。 彼はふと思う。 「これは録音に対して、記者がそれに合わせることは可能ではないのか。妙に淡々とした喋りで進めている上に、インタビュアー自体も全く見たことがない。もしや、役者か」 仕事の時にいつもつけているサングラス。今日はなんだかつける気にならなかった。しかし彼はその時、バッグからサングラスを出して付けた。
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