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第134話 青白い炎
青白い炎がミサキを討ち祓った。次いで内庭へと吹き出し、温州蜜柑に突撃して燃え上がると、黒煙を発して消え失せた。
ぷすぷすと焼け焦げた匂いだけが漂う。
仔細は分からぬが、ミサキを滅し尽くしたらしい。蜜柑はと言えば、ミサキに囓られ、破られ、引っ掻かれ、挙げ句の果てに正体不明の炎に包まれて黒焦げとなった。けぷっ、と煙を吐きながらいう。
「なんで、わてがこんな目に」
「あの青白い炎は、浄化の炎です。あなたは穢れから生まれた禍つ神なんでしょう? きっと、悪いものとみなされたのでしょうね」
「くっそ〜。そんなんばっかりや。そやけど、浄化の炎なんてもんが、なんで急に現れたんや。誰ぞ、そんな力に目覚めたんか?」
「いえ、違うでしょう」
「なんや、佳乃。泣いとるんか?」
「うるさいわね。あの炎は、前の主が使われていた破邪の力です。護ってくれたのよ、きっと」
炎の出所を探ってみたところ、五郎たちが隠れていた部屋の柱に御札が貼ってあった。ほとんど文字は焼けてしまっていたが、最後に、小さく『葉』と一文字、それを丸く囲ってある。
「やはり、前の主のもの」
「ほうほう。なら、見てみるかな」
腕まくりするような素振りで言って、温州蜜柑が御札に手を伸ばすと、ばちっ! と火花が飛び、その指先を焼いた。悶える蜜柑に佳乃がいう。
「なに蛸踊りしてんの。早く見なさいよ」
「踊っとるんとちゃうわ! 悶えとるんじゃ」
再び手を伸ばし、御札に残された記憶を読み取る。佳乃の前の主だろうか、微笑を湛えて、華やかな和装の女性が脳裏に浮かんでいた。
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