第140話 力関係

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第140話 力関係

 どれだけの時が過ぎたか。  無限とも思える時間、戦い続けていた。佳乃の相手は、並みの人間の倍はある巨躯に猩々面の如き顔をした外法童子である。手のひらサイズの佳乃と比べれば巨人と言って良い相手だ。  その体格差を物ともせず、外法童子の動きを読んで、その腕を落とし、足を落とし、首を飛ばした。しかし、その度に、かたかたと音を立てて元に戻るのだ。少しでも気を抜いて捕まれば容易に握り潰されるだろう。じわじわと力を増す外法童子に緊張と疲労によるものかと思いつつ、自分の力が衰えてきていることに気付いた。 「気付いたようだね」  と遠くから高島の声が聞こえた。「外法童子は、きみの力を吸い取って強くなっている。いずれ力関係は逆転する。そうなれば終わりだ」  その言葉通り、次第に佳乃の動きが鈍くなり、危うい場面が増えてきた。幾たびか外法童子を退けたが、ついにその腕に捕らえられてしまった。  ぎりぎりと握り潰さんとする。  佳乃の呻き声が響く中、視界の端に虫のようなものが入ってきたと思うと、ぷーんと飛んできたそれは、外法童子の眼前で、ぼん! と爆発した。ぐらりと倒れた隙に逃げ出した佳乃の耳に聞こえたのは、ああ、わての(ぬえ)が、と聞き覚えのある声だ。
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