【2】

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伊織もアパートに到着し、部屋に入ろうとすると「伊織、今日はバイト?」といつもよりオシャレをした母親が居間で麦茶を飲んでいた。 伊織は「いや…今日は休みだけど?どしたの?そんなにオシャレして?」と聞くと「そっか。なら良かった。実はお母さん、お付き合いをしている(ヒト)がいて、その人と会ってくれないかしら?」と恥ずかしそうに俯いた。 しばらく沈黙が続いたが「そっか。別にいいよ」と言い、お風呂場へと向かうとシャワーを浴びた。 シャワーを浴びているとき、ふと母親が元気になっていったり香水をつけたりしてスナックへ行っていたのを思い出した。 伊織は何とも言えない気持ちになったが、母親が元気になっていく姿を見て心の底から嬉しかった。 シャワーから出ると、母親が「さぁ、行きましょ♪」と言い、家を出た。 レストランへと向かっていると、母親が彼氏について話を嬉しそうに話してくれた。 中学三年生の女の子がいるらしく、年頃なのかいまいち仲良くしようにもそっけなくされたり、冷たくされていて母親が嫌われているのかもね…と笑いながら言うと「俺は母さんが幸せなら、それでいいと思ってる。ただどんな(ヒト)で、連れ子と話をしてから判断したい」と正直な気持ちを言った。 母親は「彼はね、お父さん以上に素敵な人だと思う。年頃の娘さんを、男手一人でよく見ているの。もし仲良くなったら、4人でお出かけしましょうよ!ねっ?」と言うと「もうそんな子どもみてぇなトコに行っても、喜ばないし3人で行きなよ」と苦笑しながら、頭を掻いた。 レストランに到着すると、母親が「まだ来ていないみたい。待ってましょ?」と言い、席に座って待っていた。 待つこと数分… 「いやぁ、待たせてすまないね。娘が駄々をこねちゃって…ほら早く来なさい」と、穏やかな男性の声が背後から聞こえた。 母親が「大丈夫よ。私達も今、来た所だから…」と言い立ち上がって、席を誘導した。 男性が「ほら。挨拶をしなさい。」と言いながら、前に立った。 伊織が「初めまして♪母がいつもお世話になってます。息子の伊織です♪」と言い立ち上がって、お辞儀をすると、風が目の前にいた。 風は不貞腐れた様子で口を尖らせて、知恵の輪に夢中になっていたが父親が「ほら、風。挨拶をしなさい」と言い、知恵の輪を取り上げた。 風はチラッと伊織を見たあと、もう一度顔を見て「あれ?!何で、いんの!?」とビックリした様子で、伊織の顔をまじまじと見つめた。 伊織も「あれ!?えっ??風?!」と言いながらビックリしていると、一瞬母親の顔がビクッとなりながら「あら?知り合いだったの?」と母親が言うと「なら話が早いね。私と彼女は付き合っているんだ。娘ともども、これからもよろしくね?伊織くん」と言い、父親は優しく微笑みながら右手を差し伸べてきた。 伊織は「こちらこそ、よろしくお願いします♪」と言い、笑顔で握手をした。 ふと風を見ると俯いたまま父親の後ろに隠れてしまい、動かなかった。 父親が「ほら、風も挨拶しなさい」と言うと「……よろしくお願いします…」と言い、俯いたまま母親に右手を差し出した。 母親も「風ちゃん、コチラこそよろしくね?」と言うと、恐る恐る握手をした。
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