『殺害日和』

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燦々と照りつける太陽。 さやさやと撫で合う新緑の葉。 水辺で遊ぶ幼い子供たちのはしゃぐ声。 手漕ぎボートに乗り込み、仰向けになった私はその堂々たる景色を眺め、繋げ、想像する。 「今日は殺害日和だ」 微量な重力をもつ空気は暑すぎず、寒すぎず、心地よく私の身を包み込む。 「やっぱり今日は殺害しておこう」 静かに呟く。 「お客さんは、何か物騒な事でも考えているのかい?」 ボートの漕ぎ手、白い髭をたくわえた男が私に問う。 私はフフフフと笑い返した。 こんなに天気の良い晴れた日には、普段の厭味な感情を殺害するにもってこいだ。
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