『変身日和』

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僕はスーパーヒーローだ、と先日会社の忘年会で自己紹介したところ、罵倒の嵐を巻き起こした。 兎に角皆、非現実的な事が嫌いでならないのだ、と僕は勝手に解釈する。 僕の入社した企業はとても普通だ。 普通なんて言葉ほど世の中に、共通している言葉もありはしないんだろう、なんて思いながら、やはりここで僕はこれを使う。 僕の会社は普通の会社で、みんな普通のサラリーマンとして普通に働く。 日曜日の朝。 テレビの中に映る僕は真っ赤なスーツをまとい、"普通"とはかけ離れた事をしていた。 まず、メタリックグレーとシルバーブラックのすーつを着た怪人をキックで倒そうと試る。 キックが効かない時は、腕を垂直に伸ばして緑色のビームを出す。そのビームが敵に当たれば、ほぼ勝負はついたと言っていい。その日も僕は見事に敵を倒した。 テレビを見終わると、僕は平日に返せなかったメールを一気に返そうとフォルダを開いた。 その中のひとつに目を惹くものがあった。 [君はホントにヒーローだったんだな!凄いじゃないか!僕の5歳になる息子は毎週、腕から閃光を出そうと、君の真似をしているよ] そう送って来たのは、忘年会でお世話になった次長の蒼井達郎だ。 ふうん。面白いではないか。 『変身日和』ならぬ『返信日和』ではないか。
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