相棒日和

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辰巳は身長百八十七cmと日本人にしてはかなり大きい。見るからにがっちりとした身体はスーツの上からでも鍛え上げられた筋肉を容易に想像できる。その上、くっきりとした二重瞼に切れ長の茶色い瞳、筋の通った鼻、薄くて形のいい唇。一言で言ってしまえば、辰巳は神奈川県警横浜みなとみらい署イチの男前なのだ。最近では三十六歳になって男の渋みがグッと増したと交通課の女性陣の間ではもっぱらの噂だ。そんな辰巳だが、一旦怒らせると元来のクールな容貌に殺気が加わり恐ろしく凶悪になる。それに比べて今年五十八歳になる柴田は百七十三cmのずんぐりとした体躯にくりくりと愛嬌のある目鼻立ちをしており、いかにも気のいい近所のおじさんといった風貌をしている。そんな対象的な二人だから、こうして辰巳が柴田につっかかるとまるで大きな虎に睨まれた鼠が命乞いをしている様だ。だが、捜査一課の面々は知っている。今は部長を務めるこの柴田という刑事が実は柔道の黒帯有段者だという事も、一度スイッチが入れば凄まじい気迫と胆力を持ってあっという間に相手をねじ伏せてしまう事も、そして、いかにも荒くれ者の部下たちに苦労しておりますと言った顔をして、まあまあと口癖を言いながら椅子をキイキイ言わせる時は決まって部下の主張は丸め込まれてしまうと言う事も。そんな訳で鬼の形相の辰巳に凄まれる柴田の心配をする者などここにはいない。むしろ辰巳を宥めにかかった。
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