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「悪いな、検査で疲れちまってさ。ラウンジ行くの面倒クセぇ」
「相変わらずだらけてやがる」
そう軽口を叩きながら、辰巳は塚田を直視出来なかった。話題を変えるように、お前に渡すものがあるんだと言いながらポケットから御守りを出して渡した。
「おお、ありがとな……ってこれ恋愛成就じゃねえか」
「どうせ看護婦のケツ追いかけて振られてんじゃねえかなと思ってさ」
「うっせぇ。俺はモテモテだぜ」
そう言いながら塚田がぎゅっと御守りを握ったのが分かって、辰巳は泣きそうになった。本当は病気治癒の御守りを買うつもりだった。でも、買えなかった。これを買った途端に塚田が不治の病にかかってしまうような気がして、恐ろしくて買えなかったのだ。代わりに隣にあった恋愛成就の御守りを引っ掴んで買った。そんな辰巳の思いを、塚田は感じ取ってくれたような気がした。
「……前に話した男の子がさ」
ふいに塚田が言った。
「うん?」
「次に生まれ変わったら僕も警官になりたいな、なんて言ってきてさ」
辰巳はぎくっとした。少年が自分の死を認めているような物言いに心が痛くなった。
「だから言ったんだ。次じゃなくて、今からなれって。お前は生きろって、言った」
塚田は真剣な顔をして、辰巳の目を見て言った。
「もしその子がお前に会いに来たら、面倒みてやって。俺の代わりに」
辰巳はしばらく黙ってから返事をした。
「いいぜ」
塚田は笑った。
「頼んだぜ、相棒。……なあ辰巳、もう見舞いには来んな」

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