カラフル

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「そうだ、あまりに美味しいからすっかり忘れてたわ。今日も無事達成できたんだし、写真撮ってちょうだい」  彼女は思い出したかのように目をぱっと見開いて、テーブルの上にあるポラロイドカメラを指差した。  彼女のお気に入りの、柔らかなパステルブルーをした丸っこいカメラだ。写真を撮るのは彼女との日課になっていた。そういえば今日はうっかり忘れていたと、戸棚からフィルムを取り出すために立ち上がる。  フィルムを取り出すと袋はくしゃりと潰れ、今日で最後の1枚だったのかとふと気づく。明日追加を買って来るか。そんなことを考えていると、背中につんつんとくすぐったい感触が走った。 「今日は貴方も一緒に撮らない?」 「俺も? 勘弁してくれよ」 「だって今日で記念すべき99枚目なのよ? いいじゃない」  彼女はふわりと微笑んだ。どんなに痩せこけたって彼女の笑顔は変わらない。昔からこの笑顔は魔法だ。それを見てしまったら俺は何も言えなくなってしまう。  仕方なく彼女の隣に座り、腕を伸ばして写真を撮った。自信はなかったがどうやら上手くいったらしい。巨大なわたあめと彼女、歪な顔をした自分。徐々に姿を現し始めたポラロイド写真を眺め、彼女は満足そうにぎゅっと握りしめてまた微笑んだ。 「いよいよ明日で100日目よ……準備はできてる?」 「……一応」 「私はいつでも準備万端よ」  彼女の視線がベット脇に移動した。  そこにはパンパンに膨らんだ小さな彼女の旅行かばんがある。こんなに膨らむまで一体何を詰め込んだのか確かめようとした事があったが、乙女の下着を覗く気かとこっぴどく叱られたことを昨日のことのように覚えている。
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