僕の本音

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僕の本音

 うちの娘はとてもかわいい。  本当にかわいい。  世界中に自慢したいくらいだ。  生まれた時から知っている。オムツをしていたことも、ミルクが欲しく泣いたことも。抱っこしてとせがんだり、お菓子が食べたくてわがままを言っていたことも知っている。  ランドセルをしょって、学校に行っていることもある。しかし、いつの間にかカバンが変わって、黒い服を毎日着るようになった。  長い黒いスカートを毎日履いているので、もっとファッションに気を使ったほうがいいんじゃないかと思っている。  僕的にいえば、スカートはもう少し短くてもいいんじゃないか。もっとランドセルの時はおしゃれだったはずだ。 娘よ、やればできるはずだ。娘はなかなかスタイルもいい。ズボンのときも半ズボンのときもキュートだ。それなのにあんな服ばかり着ている。  この前はあの黒い服にこっそり僕の毛をたくさんつけておいたら、ママと娘に怒られた。  僕は娘が帰ってくると玄関まで迎えに行く。  たまには違う服を着ろよとアドバイスするが全くいうことを聞かない。  ママよ、ちゃんと言ってやれ。ママの言うことなら聞くだろう?  最近娘はウキウキしているようだが、なんだろう。悪い予感がする。      娘はソファに座ると、僕を抱き上げた。  僕は娘がゆっくりと体を撫でてくれるのが好きだ。耳と耳の間をカキカキしてくれるも大好きだ。  コミュニケーションの時間、いつも娘がこっそり学校であったことやテストの話、友達とケンカしたこと、秘密の話を僕にだけ教えてくれる。  しかし、まだウキウキしている理由は教えてくれなかった。僕だってわかってしまうのだ。  娘はママに最近似てきたと思う。ママは年を取ったけど。娘は美しくなった。   娘は時々落ち込んだりするけれど、スマホというやつにかかりっきりだ。 スマホを見てにやにやしていることもある。  発情期か? 娘も大きくなった。  男かもしれない。絶対にそうだ。  僕は危機感を感じている。  今度家に連れてこい。  僕が見定めてやる。  うちの可愛い娘にちょっかいかけやがって……  おっと、本音がもれた。  昔、パパが怒り、うちの娘を泣かせたことがある。その時は腹が立ったので、パパの靴を噛んでおいた。  うちの娘を泣かせやがって……復讐として思い切りやっておいた。ざまあみろだ。  その後、パパはママに泣きついていたが、僕は知らん顔だ。  かわいそうな娘の頬をぺろぺろして慰めてやったら、笑ったよ。  あの子の笑顔は本当にかわいいんだ。  はっきり言わせてもらうと、夜しかいないやつにこの家は任せられない。  僕が守るのだ。昼も夜もママも娘も。  そんなわけで、今度男を連れてこい。  僕が歓迎しよう。  今気になるのはあの四角いつるっとしたスマホというやつと娘の男だ。  機会があったらスマホを取り上げてやろうと思うが、娘のおもちゃを取り上げると娘は昔から大騒ぎするからな。気をつけないと。  男のほうは、うちに来たら、いっちょもんでやろうかと思う。パパがだらしないからな。僕がやってやろう。仕方ない。  ママ、聞いているかい。  僕はそろそろお腹がすいたよ。  ママはいつも家を片付けている。僕は言いたい。多少汚くても死にはしないと。けれど、寝床がきれいなのはうれしいよ、ありがとう。  ママは僕を抱き上げ、「ごめんごめん、遅くなって。太郎ちゃん、ごはんにしよう」と言った。  僕はママの顔を見つめた。 「今日はいい天気よ。小春日和。あとで散歩に行こうね」  僕は「ワン」と答え、長いしっぽの毛を振った。
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