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やがて不意に、聡が顔を上げた。真っすぐにおれを見て、言う。
「さっき、和は、四月一日が十八才の誕生日だって言ってたな?」
「そうだけど――」
やっぱり、コドモだって言いたいんだ。と身構えるおれに、聡は思いも掛けないことを言った。
「それまで、待っててくれないか?」
「え?」
小さな、今にも消えそうな声で聡が言い足す。
「その・・・もし、待っててくれるなら、だけれども」
「でも、何で?」
四月一日まで、あと一か月半くらいしかない。その間に聡は一体、ナニをどうする気なんだろ?
とっさには全然、分からなかった。
聡が重たい口を開いた。
「青少年育成条例って、知ってるか?」
「・・・聞いたことがある」
テキトーに答えたが、ホントは現役高校生ナメんなよって、聡に言ってやりたかった。
それをサラッと口にして、全く気乗りがしないオッサンのエンコ―まがいのナンパを、何度撃破してきたことか。
「おれってこう見えても、まだ十七なんだよねー」と言った時の、オッサン
の間抜け面に大笑いしてたおれだったが――、今は、まだ十七なのがマジで悔しい。ホント、くやしい。
聡は低い声で言った。
「もし、今、和と付き合ったら、おれは正真正銘、ホンモノの犯罪者になってしまう」
「ホンモノの、犯罪者・・・?」
聡は笑った。
さっきも見せた暗く、それでいてゾクゾクするほどエロい笑顔だった。
「――ゲイってだけでも後ろ指さされるに、他人のダンナ寝取ってさ、その上、未成年者と不適切な関係を持つなんて、ヒトとしてサイテーだろ?」
「・・・・・・」
おれは黙って、聡らしくない、全然似合ってない投げやりな言葉を聞いてた。
おれの方がイタくて――ツラくて、聞いてることしか出来なかったから。
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