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「俺は旭が思っているような人間じゃない」
「そんなこと……」
「君が知らないだけだ」
「ならこれから相馬君のことも教えてください! 私も相馬君のことを知りた」
「俺は君に自分の事を話すつもりはない。俺にあまり関わろうとするな。デメリットはあっても、君にメリットは何一つない」
小夏の顔がくしゃりと歪む。
八雲は今まで感じたことのないような胸の痛みを感じて咄嗟に顔を背けた。
自分の拳が視界に入る。
傷跡だらけの手。
自分の努力の証、本物の証だと思っていたそれをこれほど否定的な感情で見つめたことはなかった。
咄嗟に手を隠した八雲は小夏に小さく頭を下げ、乱暴に鞄を掴み保健室を出た。心臓がバクバクと暴れる。シャツの上から胸の辺りを乱暴に掴むが、暴れ回る心臓を抑えるには力不足で。
八雲の頭の中は自分でも分からないほど、自分自身への苛立ちと嫌悪感でいっぱいになっていた。
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