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自業自得だ。とばっちりは食らいたくない。絶対に。八雲は冷めた目つきでロイを一瞥した。
「ねぇ八雲、貴方今日は一段と酷い顔よ。鏡見た?」
突然の不意打ちに八雲の心臓がびくりと跳ねた。しかしエリザはただ心配していただけのようだ。八雲の顔を覗き込むとまるで姉のように彼の頬を撫でた。
「そ、そんな酷い顔をしているか……?」
「えぇ、まるで死神みたい。またあの夢を見たんじゃないの?」
八雲はギクリと肩を震わせた。
「ま、まぁ……いつもの事だ」
「いつもの事って……もう何年見続けてるのよ。前いた組織での任務中にあった事でしょう? そんなもの持ってるからいつまでも思い出すんじゃない、 まるで呪いよ。見ず知らずの人間にそこまで苦しめられて、可哀想……」
エリザは思い詰めたように八雲の胸元を見つめた。
ーー呪い
その言葉が相応しい様にブラックダイヤが鈍く光る。その光は底の見えない、何か末恐ろしい力を感じるものだった。
しかし八雲はペンダントを握ると、慌てて中に着込んだシャツの中へ隠した。
「八雲……!」
「いいんだこれは、もう気にするなエリザ。俺は大丈夫だ」
「でもっ」
「本人がいいっつってんだからほっとけよ」
エリザが振り返ると、いつのまにか追いついていたロイが、赤く腫れ上がった鼻を撫でつつ面倒そうに呟いた。
「もう復活したのね。その生命力ゴキブリ並だわ」
「おい、聞こえてるぞ」
「2人ともその辺にしておけ、ボスが聞いているかもしれない」
目の前には他の部屋とは違った大仰な扉が立ちはだかっていた。分厚い甲板のようなその扉はアリ一匹の侵入も許しそうにない。
天井に取り付けられた監視カメラが、八雲たちをじっと見つめていた。
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