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モニターを眺めながら情報を少年に話す男は、とても言いづらそうに渋りながら答えた。
「BCの反応地点は常に移動を続けています」
「要するに?」
「人間の……体内に埋め込まれているようです」
くるくると指先で自分の黒髪を弄んでいた手がピタリと止まった。静かに溜息をつき、隣のオリバーに目配せをするが彼も目を伏せてしまったため、もう一度盛大な溜息がでてしまった。
「既に宿主を見つけていた、という訳か。道理で反応が鈍かった訳だ。チッ……映像、映せる?」
「了解」
パッと目の前の大スクリーンに映し出された映像をみて、少年は丸い瞳をさらに丸くしヒューっと口笛を吹いた。
一方オリバーの眉間には軽く皺が寄り、瞳が目の前の現実を憐れんでいる。
「可愛い娘だね。水兵の格好してる……ジャパンの制服かな?」
「旭小夏、17歳。私立綾瀬川学園高等部に通う高校生です」
すると、報告員の言葉にオリバーはぴくりと眉を動かした。
「Asahi?どこかで……」
「BC発明者、湯浅冬生博士の妻春子博士の旧姓です。血縁の可能性が高いとの判断が出ています」
「まさか……2人に娘が?博士はいったい何を考えて」
「何も考えてないと思うよ」
少年はオリバーの話をピシャリと止めた。こめかみは細かく震え、琥珀色をした左目の瞳孔がまるで虎のように黒く開いている。
「ただBCを……BlackCubeを残したかったんだよ。それで隠さなければいけなかった。目の前にあったのは絶好の容れ物だ。使わない理由がない。それがこんな少女だったとしても、自分の娘だったとしてもね」
「このこと、奴らは気づいて?」
「分からない。が、時間の問題なのは確かだ。我々NeRoが必ず阻止し、この娘を傷つけずして破壊する術を探す。決してBianCoの奴らには渡さない。僕は世界が黒に染まるのを、もう見たくないんだ」
ボスはその白くて華奢な手のひらからは想像もつかないほどの強さで自らの左目を握ると、右目に宿す青色の炎を静かに揺らしながら低く唸った。
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