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「そうならないようにするのが僕の務めであり生かされている理由だ。それでも万が一彼女がただの兵器に成り代わってしまったとしたら……彼女は僕が殺す。道連れにしてでも」
「No.8が黙っていませんぞ」
「八雲は一と全を天秤にかけた時、どちらを取ると思う?彼は馬鹿じゃない。僕が教育してきたんだから」
オリバーが口を挟む暇もなく扉は閉められてしまった。
ボスはもつれる足をなんとか交互に前へ出しベッドへ倒れ込んだ。冷たいシーツが小さな少年の、陶器のように滑らかで柔らかい肌を刺す。
まるで針のむしろだなと、ボスは小さく苦笑した。
「……それでも八雲はきっと、一を選ぶんだろうな。あの子は優しいから……僕は取り返しのつかないことをしてしまった……」
ボスは小さく体を丸めて、両目を強く閉じた。まぶたの裏ではいつもの惨劇が壊れたビデオのように何度も何度も再生されている。
それを見て見ぬ振りをしながら眠りにつくのも随分と板についてきたはずなのに、なぜだか今日はその映像が濁流のように流れ、全く消えてはくれなかった。
彼は結局眠りに落ちることも許されず、小さなその両手で自らの細い身体を抱きしめることしかできなかった。
「Ti prego di perdonarmi……yakumo」
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