mission 1

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「佐久間先生! 本当に相馬君は私を助けようとしただけなんです!そして本当に手を出していません。避けただけです!私が証人になります!」 「ほう。そうか、避けただけでこんな事ができるのか。だとすればお前は……まるで映画の中のエージェントのようだな。高校生に化けた」 「何が言いたい」  八雲は遠回しに何かを言いたげな佐久間の態度に、敬語も忘れ低く唸り声を上げた。しかしそんなものは関係ないとでもいうように佐久間は八雲を挑発するように鼻を鳴らす。その目は本当に言ってもいいのか? とでも言っているようだった。 「どちらにせよ、お前はこの後の授業に出る必要はない。このまま生活指導に突き出してやる」 「「待ってください!!」」  中庭にまた別の声が響き渡る。息を切らした成宮一樹と三木向日葵が八雲と小夏の前に立ちはだかった。 「先生、本当に相馬は何にもしてません! それに小夏や相馬を襲ってきたのはその先輩達です。下級生相手に大勢で……悪いのはあの人たちの方じゃないですか?」 「俺たちがずっと上から見てました。3組の奴らは全員……あと他のクラスの人たちも何人か見てたはずです。全員が証人になります」  佐久間はただじっと4人の生徒を見下ろしていた。誰一人としてひるむ様子のない、強い眼差し。佐久間はそっと目を伏せると踵を返し、サッカー部員の方へ向かった。 「おい……起きているんだろう。あの二人の言うことは本当か」 「うっ、先生……俺たちあの相馬って野郎に」 「俺は本当かと、聞いているんだが?」  言い訳を吐こうとした大河の言葉を押しつぶすかのような低い声が響く。大河は一瞬ヒッと悲鳴をあげ、佐久間を見上げた。  怒りも侮蔑も、何も感じられないその瞳に大河は身体の芯から身震いをした。なぜうちの学校は、こんな訳の分からない化け物ばかりなんだ。  大河はそんなことを考えながら、ポツリと、本当ですと呟いた。
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